ネットショップを運営するうえで欠かせないのが「特定商取引法に基づく表記」です。簡単に言うと、商品者保護のために、誰が販売しているのかを明示しないといけないということです。クレジット決済などの代行業者からも正確な入力を求められるので、不正確な情報を登録することはできないのですが、個人事業の場合には自宅の住所、電話等を開示することになるので、できれば記載したくないと思っている人も多いのも事実です。では、特定商取引法に違反したらどうなるのか?ということを調べてみました。
現実には、「「特商法で通販企業を処分することはあまりない。」が、実際に処分されたのが「家電のBigOnion」
個人的には、「特定商取引法に基づく表記」は正確にしないといけないものだと考えていますが、では、違反するとどうなるのかという点については、「業務停止処分がされるらしい」というレベルでの認識でした。
今日のニュースで、「家電のBigOnion」というネットショップが、「販売業者の氏名又は名称」の表示義務違反、「販売業者の電話番号」の表示義務違反、キャンセル時の返金対応の著しい遅延を理由に3か月の業務停止命令を受けたという記事を読み、少し調べてみました。
「家電のBigOnion」は被害者の会ができるほど問題になっていたネットショップ
「家電のBigOnion」というネットショップがどういうお店かというのを調べてみたところ、「価格.com」の最安値よりもさらに安い価格で家電を販売しているネットショップのようです。客の支払ったお金で商品を仕入れて販売をする形態のようで、客にとっては商品が届くまで時間がかかるのは当然と思わせつつ、商品が無い場合には返金をしないということが常態化していたようです。
「家電のBigOnion」で検索をすると、詐欺会社という書き込みや、被害者の会などが出てきます。全国の消費生活センターにも多くの苦情が寄せられていたようです。
消費者庁の取引対策課によると特商法で通販企業を処分することはあまりないとのコメント
上記の記事内では、消費者庁の取引対策課のコメントが出ているのですが、「特商法で通販企業を処分することはあまりない」最近では、「危険ドラッグを販売する通販会社に関する処分が1件あったくらい」だそうです。
実際には、処分の前に行政指導などが入り、行政指導の結果などを見て行政処分されるということですので、違反があったネットショップは行政指導段階で改善したということなのかもしれません。
特定商取引法に基づく行政処分の執行状況は公開されている
今回、調べてみて初めて知ったのですが、特定商取引法に基づく行政処分の執行状況は消費者庁が運営していると思われる「特定商取引法ガイド」というページで公開されています。
処分状況を見ていると、平成24年度:121件、平成25年度:117件、平成26年度:96件、平成27年度:84件、平成28年度:61件、平成29年度:61件(本日時点)と理由はわかりませんが、減少傾向になります。
処分の多くは、「訪問販売」や「電話勧誘販売」が多いですが、「通信販売」も何件がありました。「通信販売」では、例えば開運ブレスレットの業者が名称等の不明示、契約書面の不交付、不実告知、債務不履行、表示義務違反、虚偽・誇大広告、顧客の意に反する申込みなどで業務停止処分を執行されていました。とはいえ、ここ2年くらいは「通信販売」で処分が執行されている業者はいませんでした。
消費者からの苦情をもとに処分されている様子
執行状況を見る限り、表示義務違反を能動的に探しているというよりは、消費者から苦情があった場合に調査されているようです。
ざっと見た限りでは、「商品が届かない」「商品の内容が宣伝と異なる」「不要な営業行為をされる」といったことをきっかけになっているようです。
これ以上のことはわかりませんが、表示義務を怠ると違反行為ですので、行政指導などが入って改善されて処分の執行までされていないケースがこの執行件数の裏には膨大にあるものと思われます。
消費者目線で見た場合に、クレジット決済や後払いが利用できないネットショップは怪しんだ方が良い
最後に余談ですが、消費者として騙されないようにするには、少なくともクレジット決済や後払いが利用できないネットショップは怪しんだ方が良いです。特に銀行振り込みだけの場合にはかなり怪しいです。
なぜかというと、ネットショップがクレジット決済や後払いを利用するために、印鑑証明などの公的な書類の提出が必要となるため、詐欺行為をおこないにくいからです。
ただ、銀行振り込みのみ=悪いというわけではありません。例えば非常に小規模なネットショップで銀行振り込みのみというケースもあります。その点は消費者としても見極めが必要です。